住宅選びで気になりやすいポイントとして「断熱等級」があります。断熱等級が高いほど断熱性に優れた住宅なので、この指標は住宅の購入時に欠かさずチェックするべきです。しかし、断熱等級ごとに何が違うのか知らない人も多いことでしょう。本記事では、住宅における断熱等級に焦点を当てて詳しく解説するので、参考にしてください。
断熱等級の概要
断熱等級は、住宅の断熱性能を示す基準です。国土交通省が定めた「住宅の品質確保の促進等に関する法律」に基づいています。この等級は1から7の7段階で、数字が大きいほど断熱性が高いです。
等級を達成するには、断熱材や開口部などの建材が一定の基準を満たす必要があります。断熱等級は1980年に省エネ法に基づき導入され、その後、改正が重ねられています。
特に2022年には、新たに等級5(4月)、等級6・7(10月)が追加されました。これらは「2050年カーボンニュートラル」の実現を目指す取り組みの一環です。断熱性能を向上させることで、住宅からの炭素排出を減らし、脱炭素社会の実現を目指しています。
断熱等級ごとに何が違う?
断熱等級は、住宅の外皮(屋根、天井、壁、床、窓、ドアなど)の断熱性能や日射遮蔽性能を評価する指標です。等級は1から7まであり、数字が大きいほど高い断熱性能を示します。
断熱等級を決定する要素には、UA値(外皮平均熱貫流率)とηAC値(冷房期の平均日射熱取得率)があります。これらは、地域ごとの気候条件に基づいて基準値が定められているのです。
等級ごとの基準
等級7は「HEAT20」G3基準と概ね同等で、暖冷房にかかる一次エネルギー消費量を40%削減できる性能を持ちます。等級6は「HEAT20」G2基準と同等で、一次エネルギー消費量を30%削減可能です。
等級5は「ZEH水準」と同等で、ゼロエネルギーハウスを目指す基準に達しています。等級4は「平成28年省エネ基準」と同等で、最も高い等級として利用されていました。
しかし、2025年度以降は全ての新築住宅に等級4以上が義務化されるため、事実上最低等級となります。等級3、2、1はそれぞれ過去の省エネ基準と比較され、等級1は昭和55年省エネ基準未満となります。
ZEH水準とは
ZEH水準は、年間の一次エネルギー消費量をゼロにすることを目指した住宅の基準です。断熱性能と高効率設備の導入に加え、再生可能エネルギーの活用が求められます。HEAT20は、一般社団法人「日本の高断熱住宅研究会」が設けた外皮性能基準で、ZEH水準よりも厳しいG1、G2、G3の3段階があります。
UA値・ηAC値の概要
断熱等級を決める主要な指標であるUA値は、外皮を通る熱の損失を示す数値です。この数値が小さいほど、断熱性能が高くなります。ηAC値は、太陽の日射熱の侵入しやすさを示す数値です。こちらも、値が小さいほど遮熱性能が高いことを意味します。これらの値は、地域ごとに異なる基準が設定されています。
断熱等級の高い住宅のメリット
断熱等級が高い住宅には、さまざまなメリットがあります。以下に、主なポイントを5つ紹介します。
快適な室内環境
高い断熱性能により、冬は暖かく、夏は涼しい室内環境を維持できます。UA値やηAC値が小さくなることで外気の影響を受けにくく、吹き抜けや高天井でも効率的に温度調整が可能です。さらに、寒さや暑さによる集中力の低下を防ぎ、テレワークや勉強の際にも良い環境が提供されます。
健康改善の期待
高断熱住宅は、風邪や冷え性、喘息、アレルギーなどの症状を改善する効果が期待できます。また、室内の温度が一定に保たれることで、生活習慣病や認知症のリスク軽減にもつながります。
ヒートショックのリスク軽減
高断熱住宅は、室内全体の温度を均一に保ちやすく、ヒートショックを防ぎます。断熱性能の向上により、室温の急激な変化を抑え、安全な環境を提供します。
節電・節約
断熱等級が高い住宅では、外気の影響を受けにくいため、エアコンや暖房を効率的に使えます。設定温度を低めにしても快適に過ごせるため、電気代の節約につながります。
補助金の利用
新築やリフォームで断熱性能を向上させる際、都道府県や市町村から補助金を受けられることがあります。これは「2050年カーボンニュートラル」の実現を目指した取り組みの一環として、省エネ住宅の支援が行われているためです。条件や期限が設定されている場合があるため、事前に確認しておくことが重要です。
まとめ
住宅選びにおいて重要な指標となる「断熱等級」は、住宅の断熱性能を示す基準です。これは、等級が高いほど断熱性に優れた住宅となります。断熱等級は1から7の7段階で、UA値やηAC値によって決まります。高い断熱等級の住宅は、快適な室内環境を維持し、健康改善やヒートショックのリスク軽減、さらには節電・節約にもつながり、メリットが多いです。また、断熱性能を向上させることで省エネ住宅として補助金を受けられる可能性もあります。断熱等級が高い住宅は、快適性、健康、経済、環境面で大きなメリットを提供し、住まいの質を高める重要な要素です。住宅を選ぶ際は、断熱等級を気にして選ぶことをおすすめします。本記事が、断熱等級について触れるきっかけになれば幸いです。
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